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松尾忠尚/ジャーナルスタンダード メンズ コンセプター
FOOD | 2024.7.1

ライブディナー『RITUEL City Lights』でshowmoreと考える、食と音楽の関係性。

〈RITUEL 虎ノ門〉が主催する「食と音楽によって時間を紡ぐ」をコンセプトに掲げたライブディナーイベント『RITUEL City Lights』が、去る6月14日(金)に開催された。映えある初回のゲストはヴォーカリストの根津まなみさんと、キーボーディスト/プロデューサーの井上惇志さんによるユニット・showmore。ライブレストランでのパフォーマンスも多い彼らは「食と音楽の関係性」について、どのように考えているのだろう? 話を訊かせてもらった。

Photo: Daiki Endo / Text: Nobuyuki Shigetake
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都市の夜景と、都市の音楽と。

うっすらとした高揚感が漂う、金曜夕刻どきの虎ノ門。目と鼻の先の繁華街に渦巻く浮き足だったそれともまた異なる、大人の街らしい落ち着いた雰囲気が感じられる。

今夜の会場である〈RITUEL 虎ノ門〉は、〈SELECT by BAYCREW'S〉を擁する虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの玄関口に店を構える、ブーランジェリーカフェ/ブラッスリー〈RITUEL〉の最大規模の旗艦店。そんな〈RITUEL 虎ノ門〉による新たな取り組み『RITUEL City Lights』は「食と音楽によって時間を紡ぐ」をコンセプトとしたライブディナー形式のワンデイ・イベント。今後、さまざまなミュージシャンを招いてシリーズ化も予定されている。

記念すべき第1回のゲストは、ジャズやR&B、レゲエなど、さまざまなジャンルの旨味を活かした唯一無二の音楽性で人気を博す、ヴォーカリストの根津まなみさんとキーボーディスト/プロデューサーの井上惇志さんによるユニット・showmore。リハーサルを終えてリラックスした表情を見せる2人に、食と音楽の関係、彼らにとってのライブについて、話を伺った。

リラックスしながら嗜む「秘め事」のような時間

ー ライブハウスに限らず、Billboard LiveやBLUE NOTEでのディナーライブ形式の公演も多いお2人ですが、場所や環境によってライブに臨む心持ちも変わりますよね。

井上:そうですね。ディナーライブは食事と音楽、両方に集中できる環境を作ることが前提になるので、何よりも音量と音圧には特に気を配ります。ライブハウスみたいに大きな音の中だと、食事どころではなくなってしまいますから(笑)。それに伴って変わるのがセットリスト。ライブハウスでは元気で踊れる曲を演奏したくなりますが、食事を伴うライブでは落ち着いて聴ける、しっとりとした曲を選ぶことが多いです。僕らは曲調が幅広いから、その都度「今日はどの曲が合いそうかな?」と根津と相談しながら決めています。

根津:セットリストを考える際には会場がどこなのかもすごく気にしていて。今日の会場は虎ノ門で、周囲にはビルがたくさんあって、エリア的にもすごく都心。そういう場所でのライブだとやっぱり都会をイメージして作った曲がよく似合うし、セットリストにも入れたくなります。

ー 既存の曲をライブで演奏する際は、環境によってアレンジを変えるそうですね。

井上:そうですね。楽曲作りにおいては根津の詩世界をどのように音楽にするかを前提に制作していますが、ライブにおいてはもっと柔軟に、場所、会場の広さ、設備に合わせて編成を変えて、最適なアレンジで演奏することを結成当初から心がけています。今日はチェロの伊藤修平さんを迎えた3人でのアコースティック・セットですが、ミニマムで2人でもライブができる編成の自由さ、身軽さも僕らの強みですね。

ー お2人にとってライブとは?

根津:私たちの今の気分やスタンスがいちばんダイレクトに伝えられる場。同時に、会場に足を運んでくれるみんなの気持ちをダイレクトに受け取れる場です。お互いに顔を合わせて、その場を100パーセント共有しあうとすごく元気になれるし、活力が湧いてくるんです。

井上:ライブってすごくインタラクティブな行為で、僕らが一方的にお客さんに届けるものではなく、その場で一緒に作り上げていくものというか。根津が言っているとおり、目の前のお客さんの反応って本当にダイレクトに伝わってくるし、受け取ったエネルギーはリアルタイムで演奏に反映されていく。この感覚が本当に刺激的なんですよね。僕らは2人ともライブからキャリアをスタートしているので、演るたびにやっぱりライブが本分だなと思いますし、毎回自分たちの現在地をはっきりと確かめられる。すごく大切な時間です。

根津:ここ数年、演るたびにライブの楽しさを噛み締めています。

ー リハーサルから拝見していましたが、とても楽しそうというか、リラックスしているように見えました。

井上:あはは、そうですよね。リラックスしていましたし、楽しんでいましたが、集中はしています。少人数のセットだと機材や回線など、物理的な不安要素が少ないから、そのぶん少し心に余裕ができますね。それと今、ちょうど制作期間が続いていてすごく追い込まれているので(笑)、人前に出て、根津と合わせながら演奏をすることが純粋に楽しいんですよね。

根津:私もずっと、演奏に合わせて歌うこと自体が楽しい。合わせるたびに曲って変わるし、ちがう表情を見せるんです。正直、リハにしかない楽しさみたいなのもあったりして(笑)。「今日のライブ、本当に楽しみだな」と思いながら毎度リハーサルに臨んでいますが、一方で、本番って分からないことに向かってどんどん進んでいくわけだから、何度やっても緊張します。心地よいプレッシャー、という感じですけどね。

ー 『RITUEL City Lights』のコンセプトは「食と音楽によって時間を紡ぐ」ですが、お2人は、食と音楽にはどのような関係があると考えていますか?

井上:食も音楽も、食べる・聴くだけでない、総合的な体験ですよね。「美味しいものを食べたい」「良い音楽を聴きたい」という気持ちは「美味しい食事」「良い音楽」だけで満たされるわけではなくて、さまざまなファクターが噛み合ってはじめて成立すると思うんです。たとえば飲食店だったら空間の広さや照明、時間帯やお店の混雑具合。音楽だったら、それを聴くのがイヤホンなのかスピーカーなのか、外なのか室内なのか。飲食店でBGMとして流れている音楽は食事体験を豊かにするひとつの要素かもしれませんが、ディナーライブでは、食事と音楽はお互いを高め合う、対等な関係になります。食事が美味しくて、ライブも良ければ、その時間の満足度はより高いものになりますからね。

根津:私にとってはどちらも「リラックスした時間に嗜むもの」という共通したイメージがあります。食事だったら、自分にしかないこだわりや、自分だけのオリジナルの食べ方なんかもあったりして(笑)。それってあまり人に話すことでもないし、音楽の聴き方にも共通しているかも、なんて思ったりしています。もちろん、食事も音楽も、誰かと共有する魅力があるとは思いますが、私にとっては秘め事のような時間。普段見せない顔をして愉しみたい、とてもパーソナルな時間です。ディナーライブはいつも、そういう時間になったら良いなと思いながら臨んでいます。