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CULTURE | 2024.2.1

〈セレクト バイ ベイクルーズ〉から立ち寄れる、虎ノ門エリアお散歩ガイド(後編)。

東京を代表するオフィス街として知られる虎ノ門。江戸城の外堀の名「虎ノ門」が地名の由来であり、かつては武家屋敷や寺社が集まる土地だった。今もこのエリアには閑静で風格ある街並みが残り、新旧のストーリーを持つ店や物件が点在する。ランチからディナー後の一杯まで、SELECT by BAYCREW’Sの最寄駅となる「虎ノ門ヒルズ」駅から半日でくるりと散策できる、6軒をご紹介。前編に続き後編の3軒にもご注目!

Illustration: Maiko Sugasawa / Photo: Megumi / Text: Yoko Fujimori / Edit: Shigeo Kanno
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虎ノ門 金刀比羅宮
虎ノ門エリアお散歩ガイド

4虎ノ門 金刀比羅宮

ビル群の間で愛され続けるこんぴらさん。

虎ノ門 金刀比羅宮
戦災により焼失し、1951(昭和26)年に再建された社殿。すべて尾州檜を使用した、銅板葺きの権現造り。

超高層ビルが林立する虎ノ門1丁目に、ふっと異世界に迷い込むような空間がある。虎ノ門界隈といえば愛宕山に鎮座する〈愛宕神社〉が広く知られているが、この〈虎ノ門 金刀比羅宮〉も古くから地元っ子に親しまれてきたお社の一つ。

〈虎ノ門 金刀比羅宮〉は 1660(万治三)年に讃岐国丸亀藩主・京極高和が、故郷の本宮「金刀比羅宮」の御分霊(ごぶんれい)を当時藩邸があった三田に祀ったのが起源。1679(延宝七)年に現在の虎ノ門に遷座した。「讃岐のこんぴら参り」が大流行していた江戸時代、讃岐まで行かずともお参りできると、江戸っ子たちからの熱烈な申し出があったため、毎月10日に藩邸内を開放して参拝を許したのが当宮の「ご縁日」の始まりとなった。現在も同じく毎月10日に縁日が開かれている。

虎ノ門 金刀比羅宮の銅鳥居
1821(文政四年)に奉納された銅鳥居は、港区指定有形文化財・建造物として指定されている。

江戸時代に創建された銅鳥居には左右の柱に四神(4体の霊鳥霊獣)の彫刻が施されており、こうした装飾は全国的に見ても希少だとか。また社殿は東または南向きが通常だが、〈虎ノ門 金刀比羅宮〉は江戸城の裏鬼門の位置にあるため、北東向きに作られているのも珍しい点だ。

虎ノ門 金刀比羅宮の良縁祈願セット
お守りと「良縁祈願紐」がセットになった良縁祈願セット800円。
虎ノ門 金刀比羅宮の御守と御守袋
左より、ご神紋が入った「白錦御守」700円、吉祥文様の「青海波(せいがいは)」が描かれた、小さなお札を入れる御守袋200円。仕事運を向上したいならカード型の「仕事御守」を。500円。
虎ノ門 金刀比羅宮 結神社
本殿から向かって右側に佇む「結神社」。この日も良縁を願う男女の姿が絶えなかった。

海上守護の神様として知られ、その他にも大漁満足や五穀豊穣、商売繁盛にもご利益があるとされる。特に虎ノ門界隈のビジネスパーソンにはカード型の「仕事御守」の人気が高い。近隣に商社や商船会社があることから、長く商売の守り神として親しまれてきただけでなく、良縁を願い末社である「結神社」を訪ねる男女も多い。

高層ビルの間でしばし足を止め、「八百万神の中でも運を掌(つかさど)る神様」とも伝えられる御祭神・金刀比羅大神にご挨拶するのも、虎ノ門巡りのよきルートになるはずだ。

虎ノ門 金刀比羅宮

5港式料理 鴻禧

名物シェフの調理風景を賞でる“港式料理”の愉しみ。

港式料理 鴻禧 クリスピーチキンを調理中のトミーシェフ
クリスピーチキンを調理中のトミーシェフ。臨場感満点!
港式料理 鴻禧 L字型のカウンター席(全11席)
ガラス張りの厨房を囲むように作られたL字型のカウンター席(全11席)。

憧れの中国料理人の妙技を目の前で独り占めしながら料理をいただけたら。そんな夢を叶えてくれるのが2022年7月に誕生した〈港式料理 鴻禧〉だ。

港式とはすなわち広東をルーツにした伝統的香港料理のこと。エグゼクティブシェフの覃志光シェフ(通称トミーさん)は、2002年に来日し〈福臨門海鮮酒家〉で計14年活躍した人物であり、香港最高峰と謳われた名店の味を継承する作り手として、今も多くのファンを持つ。

そして満を辞して料理長となったこの店は、トミーさんの調理台を客席側に向けて設置するという、斬新かつ画期的な作りなのだ。たとえば看板料理であるクリスピーチキンの、丸鶏に高温の大豆油を豪快に流しかける工程も、みごとな鍋さばきでチャーハンの米一粒一粒に火を入れていく様も、すべてガラス越しの客席から見届けることができる。まさにトミーさんの一人舞台、中国料理ファンにはたまりません!

港式料理 鴻禧 看板メニューのクリスピーチキン
定番Aコース18000円より、看板メニューのクリスピーチキン(写真は1羽約8名分)。約200℃の大豆油を10分ほどかけ続けることで皮はパリッ、中はふっくら&ジューシーに。五香粉入り塩とレモンとともに。
港式料理 鴻禧のもう一つの看板料理・フカヒレの醤油煮。
Bコース25000円より、もう一つの看板料理・フカヒレの醤油煮。極上と言われるタイガーシャーク(イタチザメ)のフカヒレを使用。驚くほど繊維が太いのが特徴だ。

メニューは3コースのみで、完全予約制。基本の「定番Aコース」でも、トミーさんが毎朝仕込む「上湯」の滋味深く濁りのない味わいを堪能できるスープから松坂豚の焼豚、伊勢海老やクリスピーチキン、さらにチャーハン、海老ワンタン麺など、全10品の名物料理で構成された大満足の内容。香港料理の真骨頂である希少な乾物素材も揃えており、よりこの店の愉しみを広げている。

港式料理 鴻禧のフカヒレのほかツバメの巣、アミガサダケ、浮き袋、まるで髪の毛のような海藻、髪菜など
トミーさんがコレクションする乾物の数々。フカヒレのほかツバメの巣、アミガサダケ、浮き袋、まるで髪の毛のような海藻、髪菜などどれも貴重なものばかり。
港式料理 鴻禧 今では入手困難と言われる最高峰の「吉品干鮑」のコレクション
今では入手困難と言われる最高峰の「吉品干鮑」のコレクション。単品料理でコースに「干し鮑の煮込み」を加えることも(要予約)。価格はもはや宝石級…!

名店の技を受け継ぐシェフが、最高の素材でもてなす心尽くしの香港料理。現地でも伝統的な香港料理を出す店が少なくなっていると言われる今、きっとここでしか味わえない。

港式料理 鴻禧

6Gold Bar at EDITION

虎ノ門の夜は、漆黒のバーで最先端のカクテルを嗜む。

Gold Bar at EDITION 〈エディション〉の仕掛け人、イアン・シュレーガーの手による空間デザイン
〈エディション〉の仕掛け人、イアン・シュレーガーの手による空間デザインは、妖艶かつエレガント。そのバランスが絶妙だ。
Gold Bar at EDITION ロンドン育ちのAraz Jarchlouさん
世界各地で活躍する実力派のバーテンダー&ミクソロジストが腕を競う。写真はロンドン育ちのAraz Jarchlouさん。
漆黒の店内は日本の焼杉から着想を得て、黒に塗装した木材を多用。中央には黒大理石の暖炉と金箔のアートが配され、ムーディーな暗さを保った空間にバーカウンターが舞台のごとく浮かび上がる。

〈東京エディション虎ノ門〉の美意識を体現するバーとして2022年4月にオープンした〈Gold Bar at EDITION〉。ホテル1階のエントランス横に作られた漆黒のドアを開けると、そこはもう別世界。空間デザインは1970年代のN.Yに伝説のクラブ〈スタジオ54〉をオープンさせ、その後ブティック・ホテルというジャンルを築き上げたホテル界のキーパーソン、イアン・シュレーガーによるものだ。店内はブラックとゴールドで統一され、彼ならではの洗練された“夜っぽさ”や“艶っぽさ”がみごとに表現されている。

〈SELECT by BAYCREW’S〉で思う存分大人の買い物欲を満たした締め括りに、虎ノ門の“今”を体現する1軒としてぜひ立ち寄って欲しい空間だ。

Gold Bar at EDITIONの「午前5時のゴールデン街」と「レボリューショニスト」
「Two Faces」シリーズより、手前・ゴールデン街名物のコーヒー焼酎をメスカルのスモーキーさを加えて昇華したその名も「午前5時のゴールデン街」。ナッツクラッカーを添えて。2400円。奥・ピカソの「キュビズム」スタイルからインスパイアされた「レボリューショニスト」。2400円(価格はすべて税サ込)。
Gold Bar at EDITIONの「レボリューショニスト」
ラムをベースにハーブリキュール、ビーツジュースを合わせた瑞々しい味わい。ビーツ、バジル、ビオラから抽出した3色のオイルでキュビズムの世界観を表現。
Gold Bar at EDITIONの「醤油と焦がしバターのフライドポテト、トリュフクリームチーズディップ」と「オリーブの和風マリネ、醤油、唐辛子」
右・フードメニューで一番の人気を誇る「醤油と焦がしバターのフライドポテト、トリュフクリームチーズディップ」1800円、左・鰹出汁で漬け込んでいるのが心憎い「オリーブの和風マリネ、醤油、唐辛子」1400円。

また、カクテルのクオリティの高さもオープン時から評価が高く、アジア最高峰のバーアワード「Asia‘s 50 Best Bars 2023」にさっそくランクイン。今や世界的にも注目される存在となっている。作り手はバーディレクター・齋藤秀幸を筆頭に、世界各地で活躍してきたバーテンダー&ミクソロジストが集結。彼らによって作られた現在展開中のオリジナルメニュー「Two Faces」は、7つのTwo Faces(二面性)を全16種類のカクテルで表現したシリーズだ。浅草メイドのどぶろくにソーヴィニヨンブランや洋梨を合わせてフルーティーさを増幅し、浅草の伝統とモダンを体現する「ほろ酔いライスマン」など、ユニークなストーリーと複雑で新鮮な味わいに思わずニヤリとしてしまう。

バーフードも、居酒屋料理をインスピレーション源としたヒトクセあるものばかり。一見シンプルなフライドポテトも、焦がしバターと醤油の香りを移したパウダーを纏わせ、トリュフの芳香溢れるチーズクリームをディップするという、酔客の心を掴むシェフの仕事が隠されている。こんな大人のウィットに富んだ上質なカクテルとバーフードとともに、虎ノ門の夜の余韻を楽しみたい。

Gold Bar at EDITION