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三島 正 EYETHINK コンセプター
FOOD | 2024.12.23

クリスマスディナー前はどう過ごす? アートとトイに触れ、カウンターで“アペロ”タイムを!

フェスティブシーズン真っ只中、虎ノ門エリアでクリスマスディナーを楽しむプランを立てている人も多いはず。今年はレストランに直行する前に、数時間早く集合して虎ノ門界隈を満喫してみては? 〈SELECT by BAYCREW’S〉内のアートギャラリーでオリジナルプリントの美しさを堪能したり、スタイリッシュな角打ちで“立ち呑みアペロ(食前酒)”を嗜んだり…と、ディナー前に寄りたい4軒をご紹介します!

Photo: Kenya Abe / Text: Yoko Fujimori / Edit: Shigeo Kanno
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TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO

一年の締めくくりに、自分へのギフトを探しに“模型の聖地”へ。

まるで合わせ鏡を見ているかのような、中央のフレーム(窓)が奥へ奥へと続く陳列棚。空間デザインは「トラフ建築設計事務所」が手がけた。水平に見えるが奥へと進むフロアは緩やかな傾斜になっている。

2024年5月にオープンし、大きな話題を呼んだ〈TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO〉。世界的人気を誇る模型メーカー〈タミヤ〉の新たなフラッグシップ拠点であり、施設内には同社の現行品のほぼ全種類という約6000点が揃う。〈トラフ設計建築事務所〉が手がけた空間は、高さ約4m、全長約100mにも及ぶ陳列棚の眺めが圧巻だ。

「タミヤの今がここにある」をコンセプトに、最新プラモデルをはじめミニ四駆、RCカー、工作シリーズなどの製品からニッパーや塗料などのツールが整然とディスプレイされ、イベントスペースや1/1スケールのミニ四駆「エアロ アバンテ」も常設。実車化されたスペシャルマシンの展示エリアは、今や世界中から訪れる〈タミヤ〉ファンのフォトスポットとなっている。

デジタル化が加速する令和の時代において、“箱の蓋を開けて中を確認する”という極めてアナログな行為が残されている模型の世界。この手順がなんと高揚することか。プラモデルに精通していなくとも、“ものづくりスピリット”が詰まったこの空間には、誰しもが思わずワクワクしてしまう。「(模型の愉しみは)生きる上では必ずしも必要ではないけれど、人生においての必需品です」と語る同施設のファシリティーマネージャー・山本暁さん。まさに名言。

施設内には〈ONIBUS COFFEE〉が監修するカフェも併設されているので、待ち合わせ場所としてもおすすめ。ディナーの相手と集合して、自分の(もしくは相手への)ギフトとしてプラモを購入し、施設奥のイベントスペース「MODELERS SQURE」でさっそく箱を開けて作業を始めてみる…。そんなクリスマスの午後の過ごし方はいかがだろう?

棚は製品のジャンルごとに分けられており、一番手前の棚は〈タミヤ〉の模型の出発点となった戦車のシリーズからスタートしている。こんなところからも〈タミヤ〉の歴史を感じることができる。
ミニ四駆のコーナーは各種キットだけでなくグレードアップパーツも幅広く揃える。
ニッパーやヤスリなど〈タミヤ〉オリジナルのクラフトツールも全種揃え、こちらは塗料コーナーのラッカーの一角。絶妙な傾斜も全てオリジナルで設計されたもの。
クリスマスシーズンのギフトにぴったりな特別仕様モデルも。「ミニ四駆 サンタクロース」1,320円。
ガラス張りで天井高のある、開放的なイベントスペース「MODELERS SQUARE」。ミニ四駆などの競技会やワークショップを開催するほか、テーブル席では購入した模型をその場で作ることもできる。
カフェスペースも併設。〈ONIBUS COFFEE〉が監修するスペシャルティコーヒーやソフトドリンクで一服できる。
右からラテ(M)620円、アイスコーヒー(S)520円。ともにコーヒー豆は〈ONIBUS COFFEE〉の「オニバスブレンド」を使用。ドリンクを購入すると、ホットは赤、アイスには青のオリジナルステッカーがもらえるのも嬉しい。イラストはイタリアのアーティスト、フランチェスカ・ゲルマンディによるもの。

art cruise gallery by Baycrew’s

伝説の写真家の目線になり、しばし冬空のNYへ。

「Untitled / undated / ©️Saul Leiter Foundation」
「Harper's Bazaar, April / 1962 / ©️Saul Leiter Foundation」
「Untitled / undated / ©️Saul Leiter Foundation」(*)

2006年、初の写真集出版によって83歳にして世界に“発見”されることとなった伝説の写真家、ソール・ライター。以来、日本でも回顧展が開催され、熱烈なファンを増やし続けている稀有な存在だ。

1950〜60年代に「ハーパーズ・バザー」誌でファッション・フォトグラファーとして活躍後、ニューヨーク東10丁目の自宅周辺からほぼ離れることなく、近隣の景色を日々カメラに収め続けたライター。カラー写真の黎明期だった1950年代から、コダック社のカラーフィルム「Kodachrome」で撮り続けた作品の、発光するような赤や黄色の発色。日本の浮世絵などに影響を受けたという大胆で精緻な構図。そして何より、“隙間の写真家”とも称される、車窓越しや水滴で曇ったガラス越しなど、何かの隙間やはざまから一瞬を切り取る独特の目線。

〈SELECT by BAYCREW'S〉内のギャラリーで開催中の本展では、2013年の没後に発掘されたポジフィルムから「ソール・ライター財団」の監修のもとプリントされた作品44点を展示。全作品が日本初登場となる。ボルドーとトープの2色に塗り分けられた壁面に飾られた作品群は、1950年〜70年代のNYの生活を捉えたもの。そこに切り取られた人々の、ふとした瞬間の指先や一歩を踏み出す足元の美しさ。唯一無二の色使いはもちろん、被写体となる市井の人々へのまなざしの優しさと“心地よい距離感”が心に響く。そうしたライターの目線に、時代を超えて魅了されるのだろう。

ギャラリーなのでもちろん入場料は無料、なんという贅沢。プリントの購入も可能だ。師走の忙(せわ)しさをいっとき忘れ、色に魅入られながら、味わい深い時間を過ごすことができるはず。

ボルドーとトープの2色で構成された会場内。
44点全作品のポジフィルム(複製)も展示。40代以上にはライティングデスクが懐かしい…!
雪の日の、水滴で曇ったガラス越しに撮ったライターの作品(*)と同様の景色が撮影できるこんな装置も。

PON CUE BON

広島発信の牡蠣とレモンで格別の“泡タイム”を。

左・広島〈竹鶴酒造〉の「竹鶴 純米にごり」をソーダ割りで仕上げた「にごり レモンサワー」1,200円。スッキリとした辛口でレモンと合う。 定番の「レモンのウフマヨ」300円はレモン果汁と少量のビネガー、卵、レモンピールで作る自家製レモンマヨネーズが絶妙。このマヨで飲めます!

虎ノ門ヒルズ駅直結、〈虎ノ門ヒルズ ステーションタワー〉のB2階に位置し、改札の目の前に広がる食のマーケット、その名も「T-MARKET」。そこでレモンイエローのタイルが一際目を引く小さなスタンドが〈PON CUE BON(ポン キュ ボン)〉。

渋谷・神泉の手打ちパスタで知られる人気イタリアン〈アウレリオ〉と広島のレモンサワーの立ち呑み店〈レモンスタンド ヒロシマ〉のコラボレーションで誕生した店で、メニューの2大看板は広島から届くレモンを使ったレモンサワーと真牡蠣。

宮崎の芋焼酎「山ねこ」にレモンを1ヶ月漬け込んだベースで作る「クラシックレモンサワー」や、広島の「竹鶴酒造」の純米にごりをソーダで割った「にごりレモンサワー」、同じく広島〈SAKURAO DISTILLERY〉のクラフトジンをベースにした 「スーパーレモンサワー」など、ベース違いのレモンサワーが実に7種類。さらに12月からは “ハシゴ酒派”のために、レモンサワーと牡蠣フライがセットになったハッピーアワーメニューも登場した(19時まで限定)。

瀬戸内・大黒神島産の真牡蠣は鮮度をそのまま味わう生食から、揚げたて牡蠣フライ、牡蠣オムレツなどアレンジも豊富。またビストロでお馴染みのウフマヨも、自慢のレモンで自家製マヨネーズを作るなど、8坪の小さな空間とは思えぬ気の利いたツマミが揃う。ドリンクはナチュラルワインもグラスで数種開けているから、生牡蠣で白ワインをキュッと、なんて楽しみ方もできる(グラス1,000円〜)。

ランチはやらず、14時からアイドルタイムなしでアルコールを出すという、酒場として一本筋の通った営業スタイルが潔い。だから夕暮れ時からのアペロ(食前酒)にもぴったりなのだ。オープン当初は立ち呑みオンリーだったが、イスを希望する声が相次ぎスツール席を設けたというエピソードからも店の愛され具合が伝わって来る。

料理に合うサワーは食前酒使いとしても有効。炭酸水の泡で胃腸を刺激して、ディナーのスターターとして活用したい!

そっと提供中の、知る人ぞ知るハッピーアワーメニュー。クラシックレモンサワーと揚げたてカキフライ2個がセットで1,000円。これは使えます。19時まで!
左・広島〈竹鶴酒造〉の「竹鶴 純米にごり」をソーダ割りで仕上げた「にごり レモンサワー」1,200円。スッキリとした辛口でレモンと合う。 定番の「レモンのウフマヨ」300円はレモン果汁と少量のビネガー、卵、レモンピールで作る自家製レモンマヨネーズが絶妙。このマヨで飲めます!
瀬戸内最大の無人島・大黒神島から届く新鮮な真牡蠣。清浄海域で養殖されているため安心して生食もトライできる。生牡蠣は2個1600円。
広島発の日本酒「竹鶴」や宮崎〈尾鈴山蒸留所〉の芋焼酎「山ねこ」などをサワーのベースに。「柿とカブのサラダ」500円など、季節素材の限定メニューもおすすめ。

LAMMAS / ISTINTO

食べ頃のチーズとパテの名品で立ち呑みペアリングを満喫する。

ヨーロッパ各国の優れた熟成士から輸入するチーズとナチュラルワインの専門店。フランス、イタリア、イギリス、スペインなどから届くチーズは80種類ほど、中でもその日状態の良いものが10〜15種類、温度や湿度が完璧に管理されたフルオーダーメイドのチーズ専用ショーケースに並ぶ。その眺めは壮観だ。

2014年に三宿にオープンした本店、そして六本木ヒルズ店に続く3店舗目だが、イートインや角打ちを有するのはこの虎ノ門ヒルズ店のみ。特にワインセラー前に設けられた立ち呑みの角打ちコーナーが、アペロ使いに最高なのだ。

 “チーズに合う”という目線でセレクトされたワインはほとんどが自然派で、グラスは泡、白、赤、ロゼ、オレンジ…と毎日約20種類開いているのが頼もしい。抜栓料は+1,000円とかなり良心的なので、3〜4人であればセラーのボトルを開けて楽しむのもいい。

サイドディッシュはもちろんチーズ盛り合わせを。たとえばきめ細かな泡感を持つ肉厚なスパークリングなら、まろやかな白カビ系や、ジロールという専用の削り機でフリルのように削ったセミハードの「テット・ド・モワンヌ」、さらにブルーチーズにマロングラッセを添えてスイーツのような味わい方を提案したりと、スタッフが絶妙なマリアージュを考えて見立ててくれる。

健やかな素材(ミルク)を使い職人が手塩にかけたチーズを、的確な熟成と管理で理想的な味わいに育てて提供するので、味わいのポテンシャルの高さは言わずもがな。さらに2021年度の「パテ・クルート世界選手権」で最優秀賞に輝いた福田耕平シェフが作る上質なパテも扱っており、新作である鹿肉のパテ・アンクルートはほんの一口、二口だけでも最高のワインの友となる。

気軽に立ち呑みでハイレベルなペアリングができてしまううえ、角打ちエリアは開店時間の11時から利用OK! …この魅力には抗えません。ディナー前であることを忘れて、ついつい呑み過ぎないようご注意を。

セラーにはナチュラルワインが200種類ほど。「チーズと同様に、小規模生産の作り手のものを集めています」と、ワインのセレクトも手がけるマネージャーの野村滉一朗さん。
これだけで至福のマリアージュ。きめ細かな泡にときめくブルゴーニュの自然派スパークリング「ビュル フィリップ パカレ」を、この日おすすめのチーズとともに。グラス2300円、チーズ盛り合わせ4種1,200円(8種は2,000円)。
福田シェフによる鹿肉のパテ・アンクルート100g2500円。写真は80gほど。アペロ使いなので、果実感のある軽い飲み口の赤を合わせて。ガメイ100%「レザン・ゴーロワ2023」。グラス1000円。
温度・湿度を徹底管理できるフルオーダーメイドのチーズ専用ショーケースとチーズセラー。その日の最良の熟成状態のチーズを見極め、盛り合わせで出してくれる。