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松尾忠尚/ジャーナルスタンダード メンズ コンセプター
CULTURE | 2024.5.10

〈title:〉が展開する「Life Catalogue」。3人のペルソナから想起された5冊とは。

SELECT by BAYCREW'sの一角に位置する〈title:〉は、国内外の多彩なアートブックを扱う恵比寿のブックショップ〈POST〉とアートコレクティブ〈SKIN〉がタッグを組んで展開しているポップアップスペース。隣り合う〈art cruise gallery by Baycrew’s〉ともゆるやかに連動し数ヶ月ごとに設定されるテーマに沿って、ユニークな雑貨や本がキュレーションされ、販売される。今回はスペースの選書を担当している〈POST〉の中島佑介さんに、5月23日まで展開中の「Life catalogue」というテーマに沿ってセレクトした本の中から、特にオススメの5冊をピックアップしてもらった。

Photo: Hiromichi Uchida / Text: Emi Fukushima / Edit: Shigeo Kanno
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読むのではなく、“体験する”ものとしてのアートブックを。

「情報を伝える手段としてではなく、モノとしての本の価値が高まってきている」と話す中島さん。2011年に〈POST〉をオープンして以来、日々国内外で発刊される写真集やアートブックと相対する中で、本のあり方そのものの変化を実感しているのだという。

「製本の仕方や紙の質感、大きさなど、本を構成する要素一つひとつが研ぎ澄まされ、一つの表現として確立しているものが増えているように感じています。それらは、仮にその作家のことを知らずとも、ページをめくる体験そのものを楽しめる場合がほとんど。先入観なく気軽に手に取りやすい本を並べることを心がけています」

その言葉の通り、中島さんが選書する〈title:〉の棚に並ぶのもユニークな本の数々。常設のものからテーマに沿ったものまで数十冊が並び、アートブックとの気軽な出会いを楽しめるのが醍醐味だ。この〈title:〉で現在展開されている「Life catalogue」は、SNSなどを通じて実在の人々からサンプリングして設定された3名の人物の日常を覗き見してみようというコンセプト。彼らが愛用しているであろうと想像できるモノや、書斎にありそうな本が、空間いっぱいに並べられている。

なおこのテーマは、〈art cruise gallery by Baycrew’s〉で開催中の、イギリス人写真家マーティン・パーの展示とも連動して設定されたもの。ありふれた日常を鮮烈に切り取ることで、観賞者に新しい気づきを与える彼の写真作品のように、〈title:〉でも、3人の人物の一見ありふれた暮らしぶりに触れることで、訪れた人に自らの生活を新鮮に見つめ直すきっかけを提供できればとの思いが込められている。

〈title:〉での選書においては、「毎回テーマが固まりきる前段階に、コンセプトを考案する〈SKIN〉さんからイメージを聞き、それを自分なりに解釈をして選んでいる」という中島さん。今回ピックアップした5冊は、どんな思いで選んだものなのだろうか。

選書1
『Book Of Plants by Anne Geene 』(De Hef刊)11,000円

「オランダの写真家アンネ・ジーネの、自然にまつわるプロジェクトをまとめた1冊。ある共同農園の一角にある土をリサーチして、そこにどんな種が落ちていて、どんな虫がいて、どんな葉っぱがあったか……などを探求した作品集も出すなど、徹底的に自然と向き合い続けている作家です。植物にまつわる作品というと、自然科学的なアプローチがなされることも多いですが、本書を含め、かねて彼女が試みているのはもう少し軽やかなアプローチ。例えば、一つの植物における葉の違いや形の違いを、特に説明をすることなくビジュアルだけで淡々と見せていく、そのスタンスが心地良いんです。今回の展示テーマ『Life catalogue』が想定する3名のペルソナのうちの1名が、自然に関心を寄せる人物像だったことに着想を得て選びました」

選書2
『EILEEN GRAY, DESIGNER AND ARCHITECT by Eileen Gray』(Bard Graduate Center刊)10,780円

「プロダクトデザイナーであり建築家でもあるアイリーン・グレーの作品集。デザインの領域に留まらず本の制作に徹底的に介入するイルマ・ボームというオランダ人のグラフィックデザイナーが関わっていることから、アイリーン・グレーというアーティストそのものが、説明的にではなく、視覚的、語感的に表現されている豊かな1冊です。また本自体の造りも面白くて、紙が薄いことが特徴。ページ1枚1枚を独立した情報にするのではなく、次のページを透けさせて見せて相互の繋がりを視覚的に感じられる状態にすることで、彼女の仕事の連続性を表現しているのではないかと勝手に解釈しています。本の可能性を広げてくれるという意味でもユニークです。本書も3名のペルソナのうちの1名に想起されて選びました」

選書3
『GATHERED LEAVES ANNOTATED by Alec Soth』(MACK刊)11,550円

「マーティン・パーと同様に、国際的な写真家グループ『マグナム・フォト』の正会員であることから選んだアレック・ソスの作品集です。彼の写真作品には、アメリカの地方に暮らし、生涯を通して一つの土地に留まるような慎ましい生活者を被写体にしたものが多く、そのドキュメンタリー的なアプローチが魅力的です。なお、新聞紙のような紙に印刷してあるところも特筆すべきところ。本を開く体験としてもユニークなんですが、個人的な解釈としては、ドキュメンタリー的なアプローチとも親和性を持たせるために、新聞紙のような再生紙を選んだのかなと。合っているかどうかはさておき、なんでこの紙なんだろう? なんでこの大きさなんだろう? と自分なりの解釈をすることで作品への理解も一層深まると思います」

選書4
『A MOUSE IN HER HOUSE by Lina Sun Park』(FIRST EDITION刊)7,700円

「ニューヨークを拠点とするビジュアルアーティストの作品集です。表紙にリボンが施されていて、工芸品のように目を引く特徴的な製本がなされています。本を開くと飛び込んでくるのは、彼女が作ったオブジェや素材、ネズミのモチーフが組み合わさった幻想的な世界観の写真作品の数々。現実をドキュメンタリー的に切り取る表現手法として多用される写真ですが、本書からは、架空の世界をすごくリアリスティックに作り出すことができる特性にも気付かされます。日常にごくありふれたモチーフを、強いフラッシュを焚いて鮮烈に切り取る点は、マーティン・パーともどこか通じますね」

選書5
『PATHÉ'O by Pathé'O』(EDITION PATRICK FREY刊)14,300円

「ブルキナファソ出身で、アフリカファッション界におけるアイコニックな存在として世界的に評価されているファッションデザイナーの作品集です。アフリカの土着紋様やテキスタイルをいかし、自らのアイデンティティへの誇りをしっかり持ちながら、それらを西欧的なファッションと結びつく表現に落とし込んでいった彼の作品が、ドキュメンタリー的にアーカイブされています。ページをめくっているだけで、アフリカ固有の文化を視覚的に体感できるのも楽しいですし、目の覚めるような鮮やかなデザインや色味には、マーティン・パーとの親和性も見出すことができます」