<SELECT by BAYCREW’S>スタッフの偏愛アイテム。
毎日のように新しいファッションが生まれる中で、<SELECT by BAYCREW’S>のスタッフが実際に“偏愛”しているのはどんなアイテムだろう。ブランドやシーズンを超えて選ばれた一着、一点には、その人だけのリアルな価値観が映し出されている。今回はスタッフが心から信頼する愛用品を通して、セレクトショップの奥行きと、ファッションを楽しむためのヒントを探っていく。
福井さんの偏愛アイテムはデニム。

「正直、最初は“デニム好き”という意識は全然なかったんです。ただファッションの一部として取り入れていたくらいで」。
そう語るのは、入社してまだ数年の福井さん。ヴィンテージデニムに触れるようになったのも、この仕事に就いてからだった。今、ヴィンテージデニムは大きなトレンドだ。店頭には興味を持って訪れる人が増えた一方で、実際に履いたことがないという人も少なくない。
「普段と同じサイズを選ぶと驚くほど小さくて履けないんです」と福井さんは笑う。だからこそ、お客さんと一緒にサイズ選びから丁寧に相談しながら進めるという。
男性は“色落ち”や“年代”で選ぶ人が多いが、女性は「かわいいから」、「この色が欲しいから」と感覚的に選ぶ人が多いのだそう。福井さん自身もまだ学びの途中だが、その感覚を大切にしながら、藤原さんによる勉強会や動画で知識を深めている。
「最近は“赤耳より前の66前期が欲しいな”と思ったり、古い年代特有の色落ちに惹かれたりするようになりました。でも実際にはサイズやレングスが自分に合うものを見つけるのが大変で。基本アメリカ製なので丈が長すぎるんです。直せばいいんですけど、できればそのままの姿で履きたい」。
そう語るように、選び方も少しずつ変化してきた。まだ“育てる一本”を手にしてはいないが、すでにその眼差しは次の一本を探している。感覚と知識のあいだで揺れ動きながら、自分にとっての一本を求めて歩みを進めている最中だ。
下島さんの偏愛アイテムはバンドT。

下島さんの場合、偏愛の対象はバンドTシャツだ。最初の一枚は高校時代、兄の影響で手にしたものだった。それがきっかけとなり、気づけば買い続け、今では倉庫を借りて150着以上が並ぶほどに増えてしまったという。
「グラフィックは最高にかっこいいのに、ボディのシルエットはどこか不格好。その矛盾がたまらないんです」。
アメリカ製の古いボディは肩幅が長かったり、裾が斜めに伸びていたりする。決して完成度の高い服ではないのに、そこにプリントされたロックバンドのビジュアルは圧倒的にクール。完璧ではないからこそ惹かれる、その不均衡こそが古着の魅力だと下島さんは語る。コレクションにはメタリカやニルヴァーナといった伝説的バンドの一枚から、トラヴィス・スコットが着用して価格が跳ね上がったレア物まで揃う。値段の上下や希少性といった市場の動きもあるが、彼にとっては副次的な要素にすぎない。大切なのは「自分にとって格好いいかどうか」。そこに尽きる。すべてが日常で着られるわけではない。むしろ大半は倉庫で眠らせておくことのほうが多い。それでも数年後に取り出したとき、「今こそ着たい」と思える瞬間がある。その時間の経過こそ収集の醍醐味だと下島さんは言う。服を手放すことはせず、増え続ける一方。収集という行為そのものが、彼のライフスタイルの一部になっているのだ。
真舘さんの偏愛アイテムは写真集。

「古本屋で偶然出会った一冊に惹かれたら、迷わず買ってしまいます。撮影で持ち運べない分、自宅の本棚はどんどん増えていく一方です」。そう語るのは、写真集を偏愛する真舘さん。国内外の写真家による作品集や、オリジナルプリントなどを収集し増え続けるコレクションは、本という形を超えて、自分の生活に影響を与える存在になっている。
その背景には、幼少期から触れてきたアート環境がある。父親はグラフィックデザイナーで、個展やギャラリー活動にも積極的だった。
「小さい頃から展示を手伝ったり、作品を間近で見たりしてきたので、自然にアートが身近でした」。
父を亡くした後、初めて展覧会を自ら組み立てた経験が決定的になり、作品や仕事に対する眼差しも変わったという。
本や写真集を買う基準は「タイミング」。仕事の資料として必要な時もあれば、素敵な表現に出会った時に手に入れる時もある。服と出会う時のように、自分のスタイルとの相性がタイミングとして訪れる。
「本はただ所有するだけでなく、世界の見え方を変えてくれる」。
と話す、真舘さんが惹かれるのは、日常を別の視点で切り取った写真だ。スタジオで整えられたものより、旅の風景や偶然の瞬間を写し取った作品に強く心を動かされる。
「普段見慣れている景色も、写真家の目を通すとまったく違う表情になる。現実がやわらかく見えたり、産業的な風景が可愛らしく映ったりする。その目を借りて世界を見るのが楽しいんです」。
彼女の探求心はまだまだ止まらない。

















