「PORSCHE Capsule Collection by POGGY」開催記念。3人が語った「ポルシェの理由」。
2025年1月31日〜3月4日。SELECT by BAYCREW'Sで開催する「PORSCHE Capsule Collection by POGGY」。ファッションキュレーターのPOGGY(小木基史)さんとポルシェがコラボレーションして、特別オーダーの「911 Carrera T」の展示やPOGGYさんのアイディアをBAYCREW’Sが形にしたアパレルコレクションのリリースも。開催を記念して、POGGYさん、神保匠吾さん(『DRIVETHRU』ディレクター)、片野晃輔さん(生物学者)という3人のポルシェ乗りが大集合。各自の普段使いのポルシェについて、自由に話してもらいました。

3人のポルシェ乗り。まずは自己紹介から。
片野:1997年式で同い年の、初代「986ボクスター(以下、ボクスター)」に乗っています。高校を卒業してアメリカ・マサチューセッツ工科大学のMITメディアラボに在籍したりして、今は個人で生物学の研究をしています。生物学、生態学の実践の機会として「veig」という造園ユニットで庭作りもやっています。

片野晃輔
かたの・こうすけ/1997年生まれ。高校卒業後渡米しMITメディアラボ研究員に。造園ユニットveigでは、北軽井沢「Tanikawa House」や東京・南青山の富士フイルム「CLAY」などを手掛ける。
POGGY:1997年から22年間、UNITED ARROWSで販売、PR、バイヤーとデイレクターを経て、その後、6年前に独立しました。今はファッションキュレーターとして、ブランドやショップのキュレーションをしています。1月30日からSELECT by BAYCREW'Sで開催する「PORSCHE Capsule Collection by POGGY」を企画しました。
会場では特別にオーダーした「911 Carrera T」や、限定ファッションアイテムのリリースもあって、それはまた後で紹介します。自分のポルシェは初代「996」で、片野さんのボクスターよりも少しだけ新しくて2000年モデル。ちょっとややこしいんですが、「911」の中でも1997~2004年の5代目が996と呼ばれています。

小木基史
こぎ・もとふみ/1976年生まれ。UNITED ARROWSのセールス、プレス、バイヤーを経て「UNITED ARROWS & SONS」ディレクターなどを担当。2018年独立。
神保:「DRIVETHRU」というオンラインモーターマガジンを10年くらいやっています。国内外のモビリティカルチャーにフォーカスして、その中でも同世代に面白いと思ってもらえそうなものを紹介しています。ずっとクルマ好きで、同じような感覚でクルマやモビリティを楽しむ人が増えたらいいなと思います。10年以上前に手に入れた「924」に乗っています。

神保匠吾
じんぼ・しょうご/1982年生まれ。2014年オンラインモーターマガジン『DRIVETHRU』スタート。キャンピングトレーラーをホテルにした「CARAVAN TOKYO」などを企画。
各自のポルシェについて語る70、80、90年代生まれ。

片野:このグリーン、本当にいい色ですよね。

POGGY:ポルシェって、カラーリングで遊んでもうるさすぎないんですよね。購入時。ウインカーとヘッドライトはクリアカラーのものが付いていました。でも、このグリーンにオレンジ色を合わせたら、クラシックっぽく見えてよさそうと思って。納車前にポルシェセンターで変えてもらいました。
片野:父親が以前、新潟でクラシックカー専門のカーショップをやっていて、僕が運転免許を取った後に実家のガレージにあったボクスターに乗ることにしました。本当は、ボクスターのヘッドライトを小木さんの996のアンバーカラーに変えたいと思ってるんですよね。

POGGY:996のパーツはボクスターと共用のものが多いので、フロントから見ると同じ車に見えますよね。なので、ポルシェ好き、911好きの人たちからはあまりイケてないモデルと認識されていたようです。でもそこが逆に面白いと思っています。
片野:6、7割がボクスターと同じパーツと聞きました。ポルシェが経営危機に陥ったときに経費削減の観点からそうしたとか。でも、このパーツの汎用性の高さは、むしろドイツ車らしくもあります。
神保:僕の924も、買った当時はまったくと言っていいほどポルシェ好きに相手にされなかったモデルですね。当時は、「924かよ」とか「お金がないならポルシェなんか乗らないほうがいい」とも言われました。でも、僕はお金があってもこれがいいんですよね。
若い人にもオススメなのは?

POGGY:自分の996って自分が買った当時でも250万円くらいで、今も探せば300万円台で買えると思います。手を伸ばせば買えない価格じゃないじゃないですか。これまであまり不具合もないので、若い人でポルシェに乗ってみたいという人にはオススメです。924は最近高くなりましたよね。
片野:924は、今、状態がいいものだと4、500万円はすると思います。去年、古物商の免許を取ったので時々中古車の販売もしています。

POGGY:昔はそこまでしなかったですよね。
神保:そうですね。僕は50万円くらいで買いました。でも、買った後に「ちょっとここおかしいな」みたいなところがいっぱいあって、すぐに修理費が車両の倍くらいかかるみたいな感じでした。どこまで修理して乗るかの見極めが難しいし、そういう意味では若い人にオススメとは言えないクルマではあります。
POGGY:本当に好きじゃないと乗れないですね。
神保:ただ、ドライバビリティーは本当に高くて。1970年代に開発されたはずなのに、今乗ってもとてもよく考えられた設計だと思います。インテリアの質感も高いです。
古着や生物学の視点から見たポルシェとは?

POGGY:古いものがもともと好きで、ポルシェにはリーバイスと通じるところがあると思っています。「911」と「501」みたいなモデル名もそうだし、年代ごとのディテールの違いがあったりもしますよね。911なら空冷エンジンから水冷エンジンに変わったり、501ならインディゴの染料が変わったり、マイナーチェンジがあります。
その中から、アメリカ製にこだわるかなど、どれを選ぶかという面白さがありますね。洋服も迫力があるものは縫い目の一つずつからそれが伝わってくるんですよ。ポルシェにも、ネジの一個一個から伝わってくる迫力があると思います。
片野:マイナーチェンジがあって、年代によってディテールが違うのが熱いですよね。年配の方から頼まれて、もう手に入らないパーツを3Dプリンターで作りたいといった相談に乗ることもありますね。

POGGY:ビンテージのリーバイスも、当時の糸を開発して直してくれるところもあります。911は60年以上、リアエンジンで後輪駆動、4シーターでがんばれば4人乗れる。スポーツカーは、普通2シーターですよね。そういうスタイルを貫いているところに哲学を感じます。
ファッションはやっぱり流行を意識する必要があって、ブレないプロダクトが身近にあると学べることが多いですね。当時は廉価版だったものが逆に今は評価されているみたいな現象もファッションに近いと思います。
片野:ボクスターと996のパーツに互換性があるという話は、DNAの話のようで生き物っぽいなって思います。なめらかなスタリングも生物のようで、この世界を生きようとするとこの形になるのかなという気もします。
神保:それでいて、基本的にはすべては機能に由来しているという無駄のなさがいいですよね。
片野:熱くなったら冷やさないといけないというのも生物みたいでかわいい。どこかからか液が漏れたりすると、「大丈夫か」と思ったりして。クルマはいろんな視点から捉えられるのも面白いですね。
自分のポルシェの好きなところ、使い方。

POGGY:996のエンジンはリアにあるんですけど、神保さんの924は前ですか?
神保:ですね。ポルシェといえば、リアエンジンが古典でクラシック。でも、924はフロントエンジン。リアの見た目もいいし、トランクは大きくて使い勝手もいいです。

片野:このボディのシルエットは、924のフロントエンジン×リアトランスミッションの「トランスアクスル」レイアウトならでは。僕のボクスターはリアでもフロントでもないミッドシップで、エンジンが運転席の後ろにあります。エンジンのレイアウト一つとってみても、ポルシェがいろいろ実験してきた歴史が分かりますね。
POGGY:924ってこうして見ると広いですよね。
片野:余裕がありますよね。ボクスターは狭くて。家族で924に乗っているのはかっこいいなと思います。
神保:荷物もけっこう載るので家族3人で。関東圏ならわりと気軽に出かけられます。平日は仕事のクルマに乗っていることが多いので、週末だけ乗っています。完全にオフのクルマです。

POGGY:自分は週に2-3日くらいのペースで乗っています。もう1台、もうちょっと小さいクルマがあってそっちは家族用。996は1人で乗ることが多いですね。

片野:ボクスターで近所のスーパーに行ったりして、基本的に日常の足ですね。父親からは、「軽自動車だと思って乗れ。サイズ感も近いぞ」と言われました。全然そんなことないんですけどね。好きなところはこのハードトップですね。幌のモデルが多いんですけど。あとは、外から眺めるよりも運転している事が多いので、自然と内装に目が行きますね。新しいのか古いのか分からないようなインテリアが気に入っています。

POGGY:996は、無骨さが残っている、やらしすぎない曲線が気に入っています。ワインボトルは地方ごとに形が違うんですが、996は、細身でなで肩の、アルザス地方のワインボトルに似ていると勝手に思ってます笑。

「PORSCHE Capsule Collection by POGGY」のアパレルと「992」の話

POGGY:そろそろ「PORSCHE Capsule Collection by POGGY」の話をしますね。ポルシェには「Porsche Exclusive Manufaktur」というカスタムオーダーできる仕組みがありまして、今回、いろいろ自分好みにした「992」をオーダーさせてもらいました。996は四輪駆動の「カレラ4」でティプトロニック、いわゆるオートマだったので、もっと911らしさを味わえるように後輪駆動の素のカレラに近いマニュアルの「カレラT」です。併せて、ポルシェとコラボしたアパレルもリリースします。今着ているジャケットもそうです。14アイテム作りました。
片野:これはセットアップで着たいですね。
POGGY:外したワッペンやシートベルトの跡が、まるで日焼けしたみたいにジャケットに入っています。僕が着ているのは生地を藍染めしてあって、ロゴは古いポルシェのロゴを使わせてもらってます。

片野:ワッペンの跡だけというのが渋いですね。
神保:いいですね。シートベルトの日焼けの部分が逆に入った、右ハンドルバージョンも出してもらいたいです。
POGGY:これは、スコットランド出身の元レーシングドライバーのジャッキー・スチュワートという人がいるんですが、彼は授賞式などにタータンチェック柄のアイテムで出席していました。それがかっこよくて、ブレザーの裏地などにタータンチェックを取り入れてあります。自分がオーダーした992も、シートをタータンチェックにしていますね。

片野:ポルシェってチェックが合いますよね。ネクタイもあるんですね。

POGGY:ネクタイやベスト、バックプリントのシャツもあります。イラストは僕がオーダーした992がモチーフで、1970年代って茶色いカラーのクルマが多かったんです。当時のセピアブラウンというカラーリングを、最新の992に落とし込みました。アートワークは、アーティストの上岡拓也さんに依頼しました。
片野:父親にこういうのを着てもらいたいですね。誕生日プレゼントにしたら喜ばれそうです。
人それぞれに楽しめる、三者三様のポルシェ。

POGGY:今日集まった3人のポルシェは、どれもひねりがあるというか。
片野:珍しい3台だと思います。走りとしてよりも、カルチャーとしてのポルシェというか、ホビー感覚というか。みなさん、日常の延長のようなスタンスで乗っているので、話していて居心地が良かったです。
神保:そうですね。今日は3人で話して盛り上がることができて、924に乗り続けてきてよかったと思いました。まだまだ、これからも乗っていこうかなという感じです。
POGGY:人それぞれに楽しみ方があるのがポルシェの魅力ですね。今回新しく992に乗り換えますが、一生911に乗ろうと思います。本音を言うと、996も残しておきたいんですけどね。妻に大反対されました(笑)。
片野:最近、河口湖の周りとか、山梨方面に安くていいガレージがあるみたいですよ。安くガレージを確保できれば、こっそり置いておくというのもできますね(笑)。
POGGY:駐車スペースの問題もそうですが、以前から乗りたいと言ってくれている方がいて、クルマもなるべく動いているほうがいいと思うので、お譲りしようと思ってます。

企画展詳細は、こちら