長尾悦美×藤原裕がつくる、新しいデニムカルチャー。
新しいデニムカルチャーの発進拠点となる〈THENIME〉がついにオープン。女性のサイズに特化したヴィンテージデニムのセレクト数は、世界屈指! 話題のショップを牽引する2人を直撃した。
ジーンズ1本ずつに物語があるデニムの世界ですが、その魅力を教えてください。
藤原さん:デニムって、いちばんの魅力は色落ちのカッコ良さにあると思うんです。その表情を育てること(自分が穿いて表情が生まれること)が、デニムを穿く楽しさ。そして、色落ちしたヴィンテージデニムは、過去の時代やそれを所有した人の歴史まで楽しむことができます。こういった体験ができるのが、デニムならではだと思います。
長尾さん:特に、第二次世界大戦中に生産された“大戦モデル”と呼ばれるデニムが分かりやすいですね。物資の流通や技術革新などの時代背景により、年代によってディテールが変わっているのも面白いなと感じます。そういう昔のことにロマンを抱きながらデニムを愛でることもいいけれど、私はもっとシンプルに、色落ちしたり擦れて破れたりしたダメージが可愛いから着たいとか、感性でヴィンテージデニムを捉えるのもいいんじゃないかって感じています。自分の物語を塗り重ねていく、そういう付き合い方ができるのもデニムの素敵なところです。
なぜ、デニムは高騰し続けているのですか。
藤原さん:二次流通品として扱われていた古着に“ヴィンテージ”という新しい付加価値がつき始めたのは、今から40年以上前のこと。それも東京・原宿から生まれた、当時はまだ世界では珍しい“服の新しい価値”でした。それが、90年代の裏原人気とともに世界に広がり、この新しいカルチャーを牽引するアイテムとしてヴィンテージデニムが注目され続けてきました。当然、過去に製作されたものである以上、数量が限られているため、人の手に渡り、その人が袖を通すことで、世の中からデッドストックものが減り、さらに希少性が高まるというサイクルが繰り返され、リーバイス501XXのような人気のモデルは世界中で争奪戦が始まっています。これが、昨今のヴィンテージデニムの高騰の理由です。
長尾さん:デッドストックだけではなく、着て経年変化しても価値が下がらない、むしろ上がる場合があるものとして、今や投資価値のあるアイテムとしても注目されています。できれば、そこに自分なりの価値を上乗せできると、より長く愛着の湧くものになっていくと思うんです。例えば、ヴィンテージの値付けにおいてはウィークポイントになる、リペアや破れといったダメージがむしろ表情として可愛いことはよくあります。そんなひと癖ある表情がスタイリングした時にも生きて、自分だけの個性になる。こういった価値も含めて、新たにオープンする〈THENIME〉から発信していきたいと思っています。
新しくオープンする〈THENIME〉について、教えてください。
長尾さん:ヴィンテージデニムを主軸としたデニムのコンセプトショップ〈THENIME〉では、藤原さんの豊富なヴィンテージの「知識」と、王道のデニムの着こなしに囚われない私の自由な「感覚」をうまく調和できたらと考えています。そんな思いから、ブランド名は、デニム生地の誕生の地とされる南フランスのニーム地方の「ニーム(NIME)」と、様々なデニムスタイルが生まれたアメリカの雰囲気を表す「ザ(THE)」を組み合わせてできました。ベーシックアイテムとしてだけではなく、感度の高いスタイルを作り出してくれるアイテムとしてヴィンテージデニムを紹介していきます。もちろん、セレクトショップなので、洗練されたデニムスタイルを完成させるアイテムを世界中からセレクトしています。
具体的に、どんなアイテムがセレクトされますか。
藤原さん:女性が穿きやすい27〜30インチをメインにしたヴィンテージデニムを扱う、世界屈指の場所になります。できれば裾上げせずに着用していただけるよう、穿きやすい裾丈にこだわり世界中から集めましたが、これがバイイングの視点からいうととても難しいことなんです。なんとかオープン日には、150本以上のジーンズを並べる予定でいます。中には、超希少な、通称、大戦モデルと呼ばれる〈リーバイス〉1stタイプのトラッカージャケットも。物資が限られていた第二次世界対戦中に製作されたため、銅製のボタンは4つ、ポケットのフラップを排している点など作業工程を省略した仕様が意匠になっているモデルです。
長尾さん:テーマは決めずに私の感覚のままにセレクトしています。大人の女性が着て、品がある装いの中に、新鮮さや意外性、さらにトレンドを加えられるアイテムを世界中から買い付けました。中には、日本初のブランドやアイテム、他にもエクスクルーシブなものもあります。デニムにおいては、“自分で育てるより、今すぐ穿きたい”と思える一点物でオーラのあるジーンズがたくさん揃っています。私が今日着用しているリーバイス701や、昔から穿いてきた80年代から90年代のカルバンクラインも並べる予定です。ウエストが27インチでも、レッグラインはそれぞれ違いがあるので、そこは一人ひとりに合わせた見立てを目指していきます。
藤原さん:ウンチクの多いアイテムとして男性の嗜好品のように扱われてきたデニムを、また新しい側面から捉えた場所になっていると思います。お客さまからどのような反応があるのか今から楽しみです。