ジュエリーデザイナーの安部真理子が手掛ける 新しい「藍」のかたち。
世界では“ジャパン・ブルー”とも呼ばれる、日本を代表する藍染め。天然素材であれば、シルクのドレスやヴィンテージウェア、真珠のジュエリーまで色濃く染まるという、新鮮な「藍」のお話をジュエリーデザイナーの安部真理子さんに伺った。

ジュエリーデザイナーの安部真理子さんは、日本特有の文化である藍染めに魅せられた一人。その美しさとアップサイクルな魅力に惹かれ、2024年1月には京都の本藍染雅織工房とタッグを組んだプロジェクト「タイムレスブルー」をスタート。和装文化と共に衰退の一途を辿る藍染めの新たな可能性を模索している。
「藍染めと聞くと、浴衣や手拭いなどのイメージが強くて、実は私自身も2022年ごろまで興味が薄かった分野だったのですが、ある時に訪れた京都の本藍染雅織工房さんに置いてあった藍で染めたシルクの着物がどこのドレスよりも素敵で、それと出会った日からのめり込んでいきました」
この本藍染雅織工房との縁がきっかけとなり、タッグを組むプロジェクトが動き始めたのだという。
「そもそも藍染めと一言で括っても、ピンからキリまであります。藍染めとは、藍の染料となる植物“蓼藍(たであい)”を使った染め物のことを言います。染料全体に天然成分が1%でも入っていれば、「本藍染」、「天然藍染」と表示され販売されているのが現実。
だから、あくまで私は天然染料 100%で仕上げた正真正銘の“本藍染”にこだわって製作を行っています。そうすると、どんな物でも混じりっ気のない深い青になり、品格のある重厚感が出てきます。そして何より、染め直しができるアップサイクルな点も魅力で、汚れたドレスや古着も元の生地よりも張りが出て、色は上書きされ、新たな価値を宿すことができます」
色を定着させることができるのは、衣類に限らない。なんと安部さんの本業であるジュエリーもその染色が生かされているという。
「そのままの表情では廃棄されてしまうような色の悪いパールや、古くて黄ばんでしまったパールを、天然灰汁醗酵建藍染め(てんねんあくはっこうだてあいぞめ)と呼ばれる、江戸時代から続く染⾊技法で染めることができます。ただ(写真を見て)これくらいまで濃く色を定着させるには、染色を100回繰り返さなければなりません。こんなに非効率なことは、正直、本藍染雅織工房とのタッグでなければ実現できませんでした。プロジェクトの準備期間から約1年が経ちましたが、今ではより色がきれいに定着する方法も分かってきてクオリティはさらに上がりました。そういう意味でも、まず他社では類を見ない製品だと思います。パール以外にも天然石の試作を繰り返しているところで、いつかは海外に日本の新しい「藍」文化を発信していけたらと思っています。」
SELECT by BAYCREW’Sでは、藍染めされたパールを筆頭に、「タイムレスブルー」のコレクションを見ることができるポップアップイベント「TIMELESS BLUE by Adlin Hue & sharanpoi」を2024年7月4日(木)から開催中。京都で人気の〈小嶋商店〉の提灯や今治のこだわりの〈OLSIA〉のオーガニックコットンタオル、手拭い、青いストーンのリングなど、このタイミングでしか手に入らない夏らしい清涼感のあるアイテムが揃う。