夕立ちのような清涼感と余韻を。 〈A LITTLE PLACE〉が開く真夏の茶会。
8月2日〜4日、SELECT by BAYCREW’Sの一角に3日間限定で出店するのが京都のギャラリー兼ショップ〈A LITTLE PLACE〉だ。期間中は、彼らのプロデュースにより池半・小嶋万太郎による茶会「夕立ち」が開かれるほか、多彩なプロダクトが揃う予定。今まさに出店に向けての準備を進める2人の店主、宇佐見紀子さんと成井大甫さんに話を聞いた。
〈A LITTLE PLACE〉のまとう空気を、
そのまま虎ノ門へ。
京都の古い町家を拠点とするギャラリー兼ショップ〈A LITTLE PLACE〉。パリを拠点に30年以上にわたって衣食住の買い付けに携わってきた宇佐見紀子さんと、庭師でアンティーク蒐集家の成井大甫さんの2人が率いるこの店は、美しさをテーマにした個性豊かなプロダクトを販売するとともに、定期的に花のワークショップを開催するなど、さまざまな形でライフスタイルを提案している。
「今回の企画は、かねて親しくしていた〈MUSE de Deuxième Classe〉のコンセプターの佐藤恵さんが京都のお店に足を運んでくれたことが発端でした。私たちの幅広い活動に興味を持ってくださって、虎ノ門のSELECT by BAYCREW’Sにお店を持って来てもらえないかとのご提案をいただきました」と宇佐見さん。普段とは異なる環境でのポップアップ出店というチャレンジングな機会に二つ返事で引き受けたが、頭を悩ませたのは“いかに〈A LITTLE PLACE〉らしさを表現するか”。活動の軸としている店から離れるからこそ、ひときわ店が立脚する“文脈”を大切にして企画を作り上げていった。
「京都では、もともと著名な茶道家や華道家にゆかりを持つ町家に店を構えている私たちにとって、第一にお茶やお花という文脈は外せないものでした。その上で、出店時期が暑い盛りの8月ということも踏まえると、何らかの形でコンクリートに溢れた街中で憩いのひとときを提供できないものかなと。色々と案を出し合う中で、茶会を開催するのが良いのではと辿り着きました」(成井)
タッグを組んだのは、京都においてもしばしばともに活動をする茶室/茶藝室の〈池半〉の小嶋万太郎さん。茶器は工芸ギャラリー〈tonoto〉の武秀律がセレクト。茶菓子には独創的で美しい和菓子を生み出す〈御菓子丸〉を、と価値観を共有し気心の知れた仲間と一緒に場を作るところにも、〈A LITTLE PLACE〉らしさが表れている。
「茶会のテーマに据えたのは、『夕立ち』です。暑い日にサーっと夕立が降ると、一瞬にして清涼感を覚えますよね。すぐに霧のように消えていくんだけど、余韻はいつまでも残る。この茶会も、信頼のおける仲間たちのそれぞれの感性が融合することで、参加してくれた人たちの心を一瞬で潤すことができるような、それでいて幻のようにスッと消えていく会になればと目論んでいます」(成井)
苧麻の着物から作られた服や、花写りの良い壺。
感性が光る美しいプロダクトも勢揃い。
そして茶会のみならず、〈A LITTLE PLACE〉の2人や〈池半〉、〈tonoto〉らが手がける多彩なプロダクトが並ぶことも3日間の醍醐味。筆頭は宇佐見さんが手がける、日本で100年ほど前に織られた苧麻(ちょま)の着物をほどいて、フランスの100年前のシルエットの服に仕立て直すファッションブランド〈紀[KI]-SIÈCLE〉のアイテムだ。
「私たちに声をかけてくれたコンセプターの佐藤さんにもまさにこのラインを気に入ってもらっていたこともあり、今回の出店でもバリエーション豊富に取り揃えられたらと考えています。ユニセックスなので、男性にも手に取っていただけたら嬉しいです。また今回は茶会が開催されることにちなんで、茶器の下に敷くなど茶席で使えるような小物も新たに作りました。幅広いアイテムをご覧いただければと思います」(宇佐見)
一方で、〈A LITTLE PLACE〉がお茶とともに大切にするのが、お花の文脈。成井さんがセレクトするアンティークや骨董からは、特に花器類が豊富に取り揃うのだとか。
「花写りのいい花器をたくさんご用意したいなと思っています。特に私が今注目している壺を含め、花器として生まれたものでなくとも私が見立てて花写りのいいと感じる器をお披露目できたらなと。セレクトに関しては、京都のお店同様いつも通りを心がけたいなと考えています」(成井)
そのほか、「夕立ち」というテーマにちなんで〈池半〉が手がける茶葉のセットや、〈tonoto〉セレクトの茶器の販売も行われる予定だ。
「何よりは私たちの活動を知ってもらいたいのが第一義。お茶の楽しみを知ったり、アンティークを触ったりすることで日常の楽しみが広がるきっかけになればいいなと思いますし、また〈A LITTLE PLACE〉に来たいと思ってもらえたら嬉しいですね」と宇佐見さん。茶会への参加は要予約だが、店内に並ぶプロダクトは3日間いつでも手に取ることができる。虎ノ門にいながら、さながら京都のような時間や空間に身を委ねに、ぜひ気軽にお店へ足を運んでほしい。