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BerBerJinディレクター 藤原裕さん
CULTURE | 2026.10.23

おかえり、スペースエイジ展。ようこそ、未知の世界へ。

この帰還を待っていた人も多いのではないだろうか。昨年、虎ノ門ヒルズ ステーションタワーで大きな反響を呼んだ「今のスペースエイジ」展が、2026年11月6日(金)、キュレーション型のポップアップスペース〈title:〉に帰ってくる。今回のテーマは、「みんなのスペースエイジ」。さらに間口を広げ、家具や雑貨、音楽、ファッションまで、それぞれの「好き」に響くプロダクトが勢揃いする。ひと足早く、その魅力を探るため、本企画の発起人・はやぶさ氏のショールームを訪ねた。こちらの好奇心をくすぐる“未知の世界”が広がっていた。

Photo: Hiromichi Uchida / Text: Keiichiro Miyata / Edit: Shigeo Kanno
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そもそも「スペースエイジ」とは何か。時計の針を、1960年代へ——。

まだ見ぬ、はるか彼方の宇宙に、人々が未来を夢見ていた頃。その憧れから、一つのカルチャーが地球に広がった。名は「スペースエイジ」。

家具や建築に現れたのは、丸く有機的なフォルム、プラスチックやFRP(繊維強化プラスチック)の滑らかな質感、そして大胆な色使い。未来は、宇宙だけでなく、暮らしの中にもやってきた。そのデザインは世代を超え、2000年ごろの日本で再び脚光を浴びる。

そして今、新たな波が虎ノ門ヒルズ ステーションタワーに到来! 〈title:〉で開催する「みんなのスペースエイジ」展の舞台は、ぐっと身近な「部屋」。かつての未来を、今の暮らしで楽しむためのヒントが集まる。

収集だけでなく、週末には自宅裏をショールームに見立て、家具を展示。芝生の上では、白と赤を軸に集めた椅子や棚のユニークな形がいっそう際立つ。実際に座ってみれば、見た目とのギャップも楽しめる。

きっと誰もが「好き」をたどれば、宇宙につながる。

「ぜひ、みんなの暮らしへ広げたい」。そんな思いを込めた今回の「みんなのスペースエイジ」展。出展するのは、発起人のはやぶさ氏と前回に続くホンダ タクロウ氏、新たに加わるふとんプール氏、宇宙飛行士の日常氏の4組。一部の愛好家が楽しんできたカルチャーを、もっと多くの人に開く試みだ。

見たことがないのに、どこか懐かしい。その魅力に迫るため、はやぶさ氏のショールームを訪ねた。

「僕自身、このカルチャーに踏み込んだのは6年ほど前。昭和レトロへの興味から始まりました。調べていくと、家具店や古着店のオーナーなど、みんなが持っているものとは違うデザインを求めて、スペースエイジを生活空間に取り入れていた人たちがいたんです。日本の80年代のバブル期には海外から家具が買い集められ、そのおかげで、国内では今も二次流通、三次流通で手に入れられる。そんな文化的な背景を知るほどに興味が深まって、気づけばスペースエイジの虜になっていました」

くねくねと曲線を描きながら、上へ伸びる《ドラゴンシェルフ 4段》。ものを置くための棚が、空間を飾るオブジェにも見えてくる。横や後ろからも眺めたくなる、不思議な存在感だ。440,000円。
アメリカの家具デザイナー、エイドリアン・ピアサールが〈Craft Associates〉のためにデザインした《スウィベル・コーンチェア》。逆円錐形のシートを、丸いベースが支える。大胆な見た目に加え、座った時の体の収まり方も確かめたい。
芝生にころんと置かれた、〈IDÉE〉の《Berry Stool》。赤と白の丸いフォルムに、「何だろう?」と、つい近づいてみたくなる。各19,800円。
棚そのものがオブジェのような《Cube XM》。直線と丸みの組み合わせが、独特のリズムを作る。何をどこに置くか、考える時間も楽しめそうだ。55,000円

一口にスペースエイジといっても、はやぶさ氏の楽しみ方は、当時のものを集めるだけにとどまらない。後年のプロダクトも組み合わせ、その解釈を自分なりに広げている。

「僕らは当時を知らない世代なので、本や雑誌を手がかりに、自分がスペースエイジだと思うものを集めてきました。1960年代の家具だけでなく、その影響を受けた後年のプロダクトもあります。並べると、形や素材、色の共通点が見えてくる。そうして、自分なりのスペースエイジ像が見えてきたんです。空間を作ると、今度はそこに合う小物も置きたくなるんですよね」

昨年の会場に、家具とともに宇宙っぽいチェスや雑誌が並んでいたのも、そのためだ。年代で区切るだけでなく、形や素材、組み合わせから楽しみ方を探す。そうした今の感覚による新解釈が、ファッション、インテリア、建築、音楽、アートへと、スペースエイジの世界を広げていく。

見て、触れて、自分の目で選ぶ。

そんな独自のスペースエイジ像の背景には、研究者でもあるはやぶさ氏のたゆまぬ探究心がある。

「スペースエイジを調べることが、子どもの頃に抱いていた、宇宙の研究者になる夢とも重なったんです。僕にとって家具は、どちらかというと研究対象。収集して、比べて、カルチャーを知りたい。所有欲より、調べたい、知りたいという思いの方が強いんです」

まず手に入れ、使い、ときには分解して、構造やパーツの違いまで確かめる。その積み重ねが、スペースエイジの魅力を伝え、その世界を広げる活動の土台になっている。

「ネットで調べれば出てくることもありますが、自分で調べたり、体験したりすることに価値を感じます。デザインや時代背景だけでなく、部屋に置くとどう見えるのか、何と合わせれば馴染むのか、使い心地はどうなのか。そういうことまで、自分の言葉で話せるようにしておきたいんです」

〈Vitra〉の《Panton Chair Classic White》(右)と、模造品(左)。似た形の二脚も、並べれば背もたれの輪郭や座面の高さ、脚元のカーブが異なる。オリジナルとリプロダクトを自ら手に入れ、使って比べてきたコレクション。左44,000円、右165,000円。

そんな探究の面白さを来場者も体験できるのが、オリジナルと、その形を模したリプロダクトの比較展示だ。

「今回は、両方をあえて同じ空間に並べようと思います。オリジナルには、デザインやストーリーの良さがあります。でも、体型によってはリプロダクトの方が座りやすい人もいるし、オリジナルは探すのが難しいものもある。一概に、どちらがいいとは言えません。先入観にとらわれず、違いを知った上で、自分自身の価値観で選んでもらいたいんです」

かつて米の貯蔵庫だった大谷石の蔵を展示スペースとして活用。米や祖父母の代の道具が置かれていた空間を片付け、照明なども整えた。
蔵の中に広がる別世界。木の梁や石壁を背景に、椅子や照明、棚がずらり。古い蔵の中で、曲線を描く家具の輪郭がくっきりと浮かび上がる。全国の店やリサイクルショップを巡り、人から譲り受けながら集めたものが、この空間に収まっている。
庭のプレハブ小屋も展示空間に。昔、自宅の建て替え中、家族が仮住まいしたプレハブ小屋で、後に物置となった場所を、はやぶさ氏がDIYで床や壁を張り替えた。スペースエイジなインテリアを集結させた魅力的な空間。身近な建物が、未来的な一室へ変わった。

集めた好奇心を、次の誰かへ。

見て、触れて、話を聞く。はやぶさ氏が自ら買って比べてきた経験は、きっと来場者が自分の目で価値を見つけるヒントになる。そして、気に入ったモノがあれば、自分の暮らしに迎えることもできる。

「モノ自体にはあまり執着していないので、調べて分かったものは手放せます。次に使ってくれる人へ渡して、そこでカルチャーが育っていけばいいなと思います」

そんな思いから、暮らしに取り入れやすい良心的な価格での展示販売を目指している。

株式会社竜人が製造し、アメリカで販売されたレコードプレイヤー《Weltron2004》。白い球体に、操作部がぎゅっと詰まった黒い正面。持ち手や台座まで含めて眺めると、ロボットのような愛嬌がある。音楽好きなら、こんな一台からスペースエイジへ。家具以外にも、世界へ入るきっかけは隠れている。
昨年の展示会場で生まれたドラマチックな出会いも、ひとつの形となった。日本のスペースエイジを象徴する「中銀カプセルタワー」の元住人と意気統合し、共同制作に乗り出したのが、1968年にフィンランドの建築家マッティ・スーロネンがデザインしたUFO型住宅「フトゥロ」の模型だ。現地へ足繁く通い、内部構造まで精巧に再現されたこの作品は、デザイナーのご家族との交渉の末に晴れて“公式承認”を得た逸品。国内で行われているフトゥロ修復プロジェクトのクラウドファンディング返礼品にも選ばれるなど、大きな注目を集めている。

ランプを一つ、椅子を一脚。いつもの部屋に迎えたその形が、暮らしを少し面白くする。次は何を合わせよう。そんな好奇心が動きだしたら、もうこの世界の住人だ。

つながる。ひろがる。みんなの、うちゅう。まずは虎ノ門ヒルズ ステーションタワーで、自分の「好き」を見つけよう。

青いコンテナの中には、さらなる未来が! 来年は「世界のスペースエイジ」という展開も構想中。空間ごと楽しむためのはやぶさ氏の実験は、まだまだ続く。