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BerBerJinディレクター 藤原裕さん
CULTURE | 2026.7.8

アートディレクターの前田晃伸さんが選書。〈title:〉で始めるサマーリーディング。

まとまった休暇が取りやすい夏は、読書にぴったりの季節。旅先の海辺や自然の中で、あるいはエアコンの効いた涼しい部屋で、思い思いにページをめくるひとときは格別だ。なかでも、写真や絵などのビジュアルを中心にダイナミックに構成されたアートブックは、その軽やかさゆえ、サマーリーディングの強い味方となってくれるはず。今回は、恵比寿のブックショップ〈POST〉がキュレーションを手がけるSELECT by BAYCREW'S内の〈title:〉の多彩なラインナップの中から、日々さまざまな出版物に触れるアートディレクターの前田晃伸さんに、この夏手に取りたい5冊を選んでもらった。

Photo: Hiromichi Uchida / Text: Emi Fukushima / Edit: Shigeo Kanno
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1『the selected gift 1974-2005』ロニ・ホーン/作(Steidl刊)

アメリカのコンセプチュアル・アーティストであるロニ・ホーンによる写真集。1974年〜2005年までの間に自身が受け取った贈り物を被写体にしている。7,700円。「ロニ・ホーンは、《Saying Wanter》という川のほとりで水にまつわるテキストを朗読する映像作品が特に好きで、一連の作品を追いかけています。鳥の後ろ姿や女性が水に浸かっている姿など、被写体を静かに淡々と記録する彼女の写真作品は時代が変わっても古びない普遍性が魅力ですね。この作品集について言えば、まずは贈り物を30年分とってあるということがすごい。試みが面白いですし、330mm × 305mmという判型も独特で、43ページという薄さも潔くてデザイン的にもかっこいいなと。水にまつわる表現も多い作家なので、この本を起点にぜひ他の作品にも触れてみて、涼しい気持ちになってほしいですね」

2『Inventory Works』マックス・ラム/作(Dent-De-Leone刊)

ロンドンを拠点に活動するデザイナーのマックス・ラムの作品集。すべてのページが袋とじになっており、それを開くとさらなる画像やテキストが現れるというつくりもユニークな1冊。11,000円。「マックス・ラムもまた好きなアーティストの一人。ウレタンのスポンジを成形した椅子や、多治見タイルとコラボしたオブジェなど、彫刻のようでいて機能的でもある、家具とアートのちょうど間に位置するようなプロダクトを精力的に生み出しています。本作は、彼の完成作品を眺めるだけでも面白いんですが、ロンドンのデザインチーム・アバケが率いるダンデリオンという出版社が手がけている点にも惹かれているんですよね。彼らの手がける本はいつもデザイン性が高く、佇まいがかっこ良くて。今回も全編袋とじの攻めた構成。ただ、若干の見づらさは否めません(笑)」

3『POTS』ロベール・オーギュスト、ジン・ゴーセラン/作(Dent-De-Leone刊)

フランスの陶芸家デュオ、ロベール・オーギュストとジン・ゴーセランの、70年にわたる活動をまとめた作品集。彼らの作品を捉えた写真やインタビューの抜粋、ドローイングなどが幅広く収録されている。6,600円。「ひと目でこの本の雰囲気にビビッときて手に取ったものです。それもそのはず、こちらもダンデリオンが手がける1冊です。陶芸家デュオの作品集であることは中を開いて初めて知ったのですが、制作過程を切り取ったような写真もあれば、生活感のある背景に置かれた陶器のブツ撮りがあったり、インタビューの抜き出しがあったり。脈絡なくさまざまなコンテンツが差し込まれているからこそ、ページをめくるたびに興味を惹かれるんですよね。この本の持つ、ムードを大切にした自由でのびやかな誌面の構成には刺激を受けますし、眺めていると窯元を旅したくなります」

4『Checked Baggage[2nd and last edition]』クリスチャン・メンデルツマ/作 (POST刊)

オランダのスキポール空港で1週間の間に旅行者から没収された品物が網羅されたビジュアルブック。 [2nd and last edition]では、アーティスト兼作家のミヤギフトシさんが翻訳した日本語の序文が添えられている。7,920円。「その独特の分厚さが妙に気になって、僕自身かなり前に初版本を購入しました。刊行された2004年当時は、ここまでコンセプチュアルに一つのテーマを掘り下げる作家はまだあまり多くなく、すごく目新しかったことを覚えています。ハサミならハサミ、爪切りなら爪切りが淡々と並ぶ一連の写真が面白いですし、今改めて眺めると、まだSNSがなく、個人的な興味が作品になり得た良い時代を思い起こさせてくれます。ちなみに本書を買うと、実際に没収された品が一つ付録としてついてきます。僕の本にも緑色のハサミがついていたんですが、あまりに普通の見た目だったのでどこかに紛れて無くしてしまいました。旅の気分を高める1冊としてぜひ」

5『The Well』ナイジェル・シャフラン/作(Loose Joints刊)

商業写真のフィールドで活躍するイギリス人フォトグラファー、ナイジェル・シャフランの作品集。1980年代から2020年代に至るまでの作品が網羅されている。11,000円。「ロンドンの雑誌カルチャーに影響を受けてきた自分にとっては、強烈に惹かれる1冊です。90年代の『i-D』や『The Face』で撮った写真がアーカイブ的に載っていて、そこに映る当時のロンドンの街並みやファッションからは、ノスタルジックな気持ちに誘われます。何よりポートレートがすごく素敵ですね。当時のカルチャーを知っている人も、そうでない人も、時間を旅する感覚になれる作品集だと思います」