「使い終わり」から、デザインは始まる。<FREITAG>が考える循環のかたち。
1993年、スイス・チューリッヒで誕生した〈FREITAG〉は、使用済みのトラックタープを再利用し、一点モノのバッグへと生まれ変わらせるものづくりで知られるブランドだ。9月26日(土)からスタートするSELECT by BAYCREW’Sでのイベントに合わせ、素材選びからデザイン、循環への取り組みまで、その独自の哲学を聞いた。
Q1ブランドの思想と原点について。
1993年の創業以来、<FREITAG>が掲げる「使用済み素材を再定義する」という思想は、現在どのように進化していますか? また、時代が変わっても変わらないブランドの軸とは何でしょうか?
A1 創業から33年間変わらないのは、「サイクル」を軸に考え、行動する姿勢です。通常は本来の役目を終え廃棄される素材に、別の文脈で新たな役割を与え、できるだけ長く使い続ける。その根底には、都市の自転車文化や、日常の矛盾さえユーモアに変える<FREITAG>らしい精神があります。
一方で、扱う素材はトラックのタープから、エアバッグやスキーブーツ、トラックのテンションベルトなどへと拡大。さらに修理だけでなく、レンタルやリセールにも取り組み、製品をより長く循環させる仕組みへと進化しています。
この秋20周年を迎える、19個の廃コンテナを積み上げたチューリッヒの旗艦店も、その哲学を変わらず体現する存在です。広くしられる観光名所にもなっています。
Q2 素材の選定について
<FREITAG>の製品はすべて世界に一つだけの一点モノです。使用済みのトラックタープは、どのような基準で選ばれているのでしょうか? また、色や柄、使い込まれた跡など、そのタープならではの魅力をどう見極めていますか?
A2 私たちは、豊かな色彩や大胆なタイポグラフィ、ロゴ、個性的なグラフィックを求めて、常に魅力的なタープを探しています。物流会社と密に連携し、交換時期を把握するほか、トラック業界の展示会に足を運び、ヨーロッパ各地で素材をリサーチ。希少な色や柄のタープには高い価格を払ってでも、<FREITAG>ならではのバッグづくりにふさわしい素材を確保しています。
Q3 クラフトマンシップと品質基準について。
タフな再生素材を使いながら、都市生活に適した機能性や使いやすさをどのように両立させていますか? また、素材が持つ武骨さと、日常使いに求められる快適さや品質とのバランスをどう考えていますか?
A3 耐久性を重視したデザインは、私たちにとって非常に重要です。役目を終えたトラックタープは、バッグとして生まれ変わった後も長く使い続けることができます。また、タイムレスなデザインと一点ごとの個性によって、使い込むほどに愛着や情緒的な価値も増していきます。縫い目を修理しやすい位置に設け、バッグデザインにモジュール式の構造を採用するなど、長年使った後もメンテナンスしやすい設計を心がけています。素材の組み合わせも重要。頑丈なトラックタープに、ストラップにはB級品のシートベルト、肌に触れる部分には柔らかな再生繊維など、用途に応じて異なる素材を取り入れています。さらに、画面上だけでデザインを完結させず、実物の3Dプロトタイプを製作。硬い素材の折れ方や重量の分散、自転車に乗った際の使い勝手などを実際に検証しています。そうした試行錯誤から、直感的に使えるバックルやポケットの配置、人間工学に基づいたカッティングなど、都市生活で快適に使うための機能が生まれています。
Q4 デザインと開発プロセスについて。
新しいモデルを開発する際、ユーザーが求める機能や形と、再生素材ならではの特性では、どちらが発想の起点になることが多いのでしょうか? アイデアから製品が完成するまでのデザインプロセスについて教えてください。
A4 どちらか一方が起点というより、素材とユーザーのニーズとの「対話」に近いものです。新製品の開発を動かすのはユーザーが求める機能ですが、実際の形を決めるのは素材の特性です。例えば、頑丈なトラックタープを、柔らかな革やコットンを前提とした形に無理やり当てはめることはできません。私たちにとって、素材そのものが「共同デザイナー」なのです。開発では、創業者が最初の<FREITAG>バッグを作ったときと同じように、「自分たちも使いたいか」「日常生活で本当に役立つか」を問い続けます。プロダクトデザインは完成形から始まるのではなく、素材と、それに関わる人々から始まります。そして、使用済みの素材に新たな役割を与えるだけでなく、使うほどに美しく変化し、長年使った後も修理できることを大切にしています。さらに、その製品が役目を終えた後にどうなるのかまで考える。それも<FREITAG>のデザインに欠かせない視点です。
Q5 循環型モノづくりと今後のイノベーションについて。
<FREITAG>は、素材の再利用だけでなく、リペアやモノマテリアルの開発など、循環型のものづくりを追求しています。完全な循環を実現するうえで、現在最も大きな課題は何でしょうか? また、近年の取り組みの中で、特に大きな成果だと感じているものを教えてください。
A5 循環型経済の実現には、業界を超えた協力が欠かせません。私たちが現在、特に力を入れているのが「循環型トラックタープ」の開発です。<FREITAG>のバッグをリサイクル素材から作るだけでなく、製品そのものも完全にリサイクル可能にするため、2020年から、使用後にリサイクルできない従来のPVCタープに代わる素材の開発を始めました。社内にサーキュラリティの専門家を迎え、タープ業界のパートナーに加え、素材や化学、複合材料などの専門家とも協働。現在は、開発したサーキュラータープのプロトタイプを実際のトラックに取り付け、走行試験を行っています。
Q6 日本では、ものづくりや経年変化、製品の背景にあるストーリーが大切にされています。<FREITAG>は、日本のファッションカルチャーやユーザーとの相性をどのように感じていますか? また、日本ならではの反応や特徴があれば教えてください。
A6 創業者が初めて日本を訪れた際、「わびさび」という、不完全さの中に美を見出す考え方に出会いました。ヨーロッパの道を走り、傷や汚れをまとったトラックタープにも、どこか通じるものがあります。それが、日本で<FREITAG>が受け入れられている理由の一つかもしれません。また、日本のユーザーは、完成した製品だけでなく、その背景にあるものづくりやデザイン、品質にも強い関心を持ってくれていると感じます。私たちのデザイナーも、日本の「金継ぎ」の精神から大きな影響を受けています。修理跡を隠すのではなく、むしろ新たな個性として見せる。そんなアイデアも、<FREITAG>の考え方と深く響き合っています。
Q7 SELECT BY BAYCREW'Sの読者がFREITAGのバッグを手にしたとき、感じ取ってほしい想いやメッセージ、あるいは大切にしてほしい視点があれば教えてください。
A7 そのバッグがトラックの幌として道路を走っていた頃の、遠い記憶に耳を澄ませてほしい。
SELECT BY BAYCREW'Sの店頭で手にするバッグも、かつては世界のどこかの道を走り、風雨にさらされてきたもの。その傷や色、柄の一つひとつに刻まれた背景を想像し、バッグが持つ唯一無二のストーリーまで感じ取ってもらえたらと思います。





















