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TRANOMON TRAD SELECT by Baycrew’s 2026 Spring & Summer collection
BerBerJinディレクター 藤原裕さん
CULTURE | 2026.4.8

ASASHIさんと語る、バーバーとトラッドと虎ノ門。

雑誌や広告、ファッションショーなど、第一線で活躍するヘアスタイリスト・ASASHIさんが虎ノ門に<ASASHI BERBAR>を構えたのが2年前。NYブランド<NOAH>のジャパンディレクターを務める中根吉浩さんがバーバーでのカットを体験しながら話を聞いた。

Photo: Shinsaku Yasujima / Edit&Text: Naoko Sasaki / Edit: Shigeo Kanno
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エントランスに描かれたショップロゴは、ロンドン時代のものと同じく、クリエイティブ集団<TOMATO>を率いるサイモン・テイラー作。

中根 「ASASHIさんのバーバーの存在はもちろん知っていたのですが、SELECT by BAYCREW’Sからこんなに近くだったんですね(笑)。どうしてヘアサロンではなく、バーバーにしたのでしょうか」

ASASHI 「子供の頃から床屋が大好きだったんです。ホットタオルとかシャボンの匂いとか、床屋の空間ってすごく気持ちがいいなって、幼いなりに思ってて。高校時代は友達をリーゼントにしてあげたりしていました(笑)。ヘアスタイリストになって渡英して、日本に戻って来て、自分の店を持ちたいと思った時に、やっぱり床屋をやりたくて。それで再びバーバーの本場でもあるイギリスに戻って、イーストロンドンのショーディッジに店を出したんです」

まずは髪質や髭のコンディションを見ながらお客さんの希望を聞いていく。普段の手入れや使っている整髪料などもヒアリング。
シルバーのトレイに置かれたシンプルな道具。プロダクトとしての美しさ、クラシカルなデザインにこだわりが感じられる。

中根 「辿り着くまでに長いストーリーがあるんですね。ロンドンのバーバーは日本の床屋とは違うんですか?」

ASASHI 「基本的には似てるんですけど、むこうだと10人中9人ぐらいは髭を生やしているから、バリカンで髭をトリムして、カットして、バーっと乾かして、が多いですね。シャンプーがないところもあるぐらい。ホットシェービングもあんまりないかな」

中根 「僕はグルーミンググッズやメンズの整髪料が好きなので、バーバーにはずっと憧れがあったんです。でも友達の美容室に通っていてなかなか変えられなかった。行きつけの店だとついお任せにしちゃうんですけど、今回はASASHIさんの意見もいただきながら、床屋さんの目線で切ってもらったのがとても新鮮でした。一番感動したのはシェービング。確かに、子供の頃に床屋さんでやってもらった記憶があるけど、それ以来だったかな。すごく気持ちよかったです。それと、お客さんがぶらりと入ってくる感じもいいですよね。『今空いてる?』みたいに(笑)」

頭の形や顔の輪郭を見ながらフレームとなるボリューム感を探っていく。ストライプのケープは米国のバーバー用品店のもの。
クラシックカーのような佇まいのチェアは1970年代のタカラベルモト社の理容椅子《879》。レザーを張り替えてリペアした。

ASASHI「飛び込みも床屋の醍醐味ですよね。仕上がりは大丈夫でしたか?」

中根 「もうバッチリです!今日のデニムの雰囲気に合っていますよね。男の美学じゃないけど、ちょっと硬派な世界観が気持ちいいです。お客さんが来た時、まずどこを見るんですか?」

ASASHI 「佇まいですね。お店に入っていらした時のインスピレーションをすごく大事にしています。そこから話しながら、頭や顔の形をしっかりと見ながら、どうしたらその人のよさを引き出しつつ、格好良くなるかを考えます。洋服と合っていないとバラバラな印象になるので、その方のライフスタイルを聞いてみることも多いですね」

中根 「そもそも、どうしてこの虎ノ門に?」

ASASHI  「実は物件ありきだったんです。いろいろ探した中で、天井が高くて、前の通りも広くて、駅からも近い。それでまず店を決めてから、虎ノ門をめちゃくちゃ歩きました。虎ノ門は、ビジネス街で都市開発もすごく進んでいて、でも、その中に古いものが残っている。一本裏通りに入るといいビストロや喫茶店、昔ながらの食堂や飲み屋も多い。ランチタイムになると前の通りはサラリーマンの方でごった返すほど平日は賑やかだし、土日になると人が少なく静かで落ち着いている。文化の発信源としての活気と歴史を感じる静けさの両方があって、そのギャップも気持ちいいんです」

中根 「僕もSELECT by BAYCREW’Sの仕事で携わるようになり、人の流れを気にして見るようになって、ちょうど2年ぐらい。先日、ボストン発のランニングアパレルブランド<Tracksmith>のイベントを<NOAH>がサポートした際に、虎ノ門ステーションタワーから皇居周辺をめぐるランニングルートでシェイクアウトランを行ったのですが、東京タワーなどのシンボル的な名所が多く、まさに東京のド真ん中なんだと改めて感じました。ASASHIさんがおっしゃったように、いつも混んでいる街が、週末は静かでスコーンと抜けたような感じになる。都会の真ん中なのに、あまり干渉されず、のんびりとリラックスしていられる場所だなと思います。東京のお正月とは言わないけど、似たような空気感があって好きですね。お客さんはどんな人が多いんですか?」

ASASHI  「ファッション関係の方や仕事の繋がりの方も多いのですが、オープンして1年ぐらいたった頃から、この辺りのお店の方や近くに事務所を持ってる方などが増えて来て、地元でも認めてくれたのかなと嬉しかったですね」

壁にはロゴをペイントしたミラー、額装した写真やイラストが。どちらもロンドンの店から持ち帰ってきたもの。

中根  「バーバーはやっぱりトラッドなものという捉え方ですか?」

ASASHI 「トラディショナルなヘアカットはもちろんベースにあるんですけど、あんまりトラディショナルに作り過ぎてもコスプレみたいになっちゃう。その方の個性を生かしながら、どこかに今っぽさを意識して加えたいと僕は思っています」

中根 「同感です。我々も”虎ノ門TRAD”というテーマでファッションを提案していますが、いわゆる紺ブレやスーツというより、ライダースジャケットが自分のスタンダードだったら、それも”マイトラディショナル”だと捉えています。例えば、モヒカンにしてる人だって、そこにスタイルがあれば ”トラディショナル”だと思うんです。ASASHIさんのトラッドとルーツがバーバーにあるように、自分なりのベーシックや定番を探すことが面白いんですよね」

偶然にもデニムスタイルのお二人。ASASHIさん(右)は知人のブランド<At Last & Co.>を身につけることが多いそう。カット&シェービングを終えた中根吉浩さん(左)は、自身が携わるブランド<NOAH>でコーディネート。ジャケット93,500円、パンツ48,400円、セーター49,500円、シューズ47,300円(すべてNOAH)